上空でクロール

雑記ブログ。目標は100000記事。書きたいときに書き、休みたいときは休む。線路は続くよ、どこまでも。

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』


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ファンタジー

好みに合わない作品について書くことは、実に容易い。気に入らないところはすぐに気づくし、よく見える。言語化して共感を得られなくても、論点は理解してもらえる。反対に、面白い作品について書くことは、なかなかに難しい。思いを伝えきれないのだ。面白さ、というのは、おそらく、つまらなさより、より個人的な体験に近しい。だから、ある場面、ニュアンスを絶賛したところで、根拠があまりに私的なので、わかってもらえないことが多い。

 

 

 

 

本作品は実にこだわって製作されている。セット、大道具、小道具はもちろんのこと、車、衣装、カクテル、ドッグフードの缶に至るまで、輝きを放っている。リアリティは細部に宿ると言うが、これほどのこだわりを見せられると、リアルな手触りはなく、作り物めいて見える。もちろん、わざとそうしているのだろう。観ていて、全然、飽きない。序盤から終盤にかけて、お話し的には緩い時間帯がけっこうあるんだけど、映像を観ているだけで楽しむことができる。

 

 

で、そのままだったら、シャロン・テート事件がまんま再現されていたら、正直、悪くないねで終わっていたかもしれないが、終盤には虚構世界における過度な復讐と、優しく穏やかな幻想的終焉が控えている。シャロンがリックを招くシーンは、実際の事件を思い出させるだけではなく、理不尽な最期を迎えた人々のかけがえのない日常を連想させるのだった。

 

 

ちなみに、事件の首謀者チャールズ・マンソン受刑者(終身刑)は、2017年に83歳で亡くなった。