日本が超高齢社会であるならば、まだ先の敗戦の記憶や伝聞に触れた人はけっこういるに違いない。
自分でさえ、二人の祖父から戦争の話は聞いていた。というか、祖父らは他の日本国民同様、有無も言わさず召集され、それぞれ海を渡った。運良く、激戦地に飛ばされなかったので、二人とも無事に帰国できた。彼らは銃声を聞いたくらいで実戦というものを経験しないで済んだ。一方の祖父は、満州では醤油が凍って参った参ったとよく言っていた。本土に残った人たちのほうが大変だったかもしれない。
二人とも、もう亡くなっている。
二人とも、よく生き、よく聞く忌まわしい病で亡くなった。
一緒に暮らしていなかったこともあり、祖父らと接した時間はそれほど多くなかった。思えば、当時のことをもっと聞いておけばよかった。
片方の祖父はアメリカよりソ連を憎んでいたのだが、庶民は庶民なりの価値観で戦争に参加していたに違いなかった。
本当に今が平和でよかった。