帰還兵のヒューマンドラマ
現代の戦争映画は基本的に反戦を謳う。
兵隊の英雄譚はアクション映画の領分になっていて、戦争映画は戦場が舞台であれ帰還後がメインであれ、戦争の理不尽さを炙り出すことに力を注いでいる。
この現代に至って、まだ戦争をしているのは驚くべきことである。
大王が名馬に跨って剣を振り回し、雑兵をバッサバッサと斬り倒して戦った古の時代と、構造的には何ら変わらないこの人類の無能さ。
国は専ら、管理して搾取して酷使する。慎ましやかなサポートの代わりに、とんでもない負担を個人に強いる。たまたまその時代に居合わせた運の悪い人々が貧乏くじを引く。ある時代の人は平和を享受できる。だが他の時代のある人は戦地に投入される。
戦争は悲惨である。特に現代の兵器は性能が高いので、無駄に命を奪う。勝ったとしても、ぼろぼろだし、他国を支配するにはとてつもないコストと努力を伴う。
生き残った英雄たちは心身に傷を負い、帰還しても悪夢と罪悪感に苛まれる。
現代の戦争で、一所懸命に戦場を駆け回るのは、力のない人々だ。有力者は安全なところにいる。もっと上の人々は戦争で金儲けをしている。みんな、そのカラクリはわかっている。わかっていても、どうすることもできない。戦争とは、庶民の悲歌だ。庶民同士の悲劇なのだ。
国は様々な装置を駆使して愛国心に訴え、民を取り込む。戦争を引き起こして、兵士の数だけの悲劇を生む。
本作品では、イラクからの帰還兵の違和感が描かれている。思い返せば、かつてはベトナム帰還兵の映画もけっこうあった。
ランボーの叫びは普遍的であり、戦争が続く以上、同様の咆哮が闇をつん裂くのだ。
もし今、戦争の是非を問う投票があったら、多くの人は非に一票を投じるだろう。
この先、状況が変わろうとも、是が上回らないことを祈るばかりだ。