■2019年 英米合作
■監督 マイケル・エングラー
■出演
□ ヒュー・ボネヴィル
□ミシェル・ドッカリー
■COMMENTS
2010年から2015年にかけて放映された海外ドラマの劇場版。作品の舞台は伯爵家の屋敷で、伯爵一家とその使用人たちの生活・交流が描かれている。
時は20世紀初頭。大戦があったり恐慌があったりと、厳しい時期である(いや、楽な時代などないか)。貴族の性質も変容していて、というか、時代に取り残されつつあり、かつての領主様的な威勢はない。
本作品は劇場版なので、ドラマを観ていない人はまず、観ようとしないと思う。ぼくもドラマを観ていなかったら、視聴しなかった。いきなり本作品を観ても不都合はないが、細かいところまでは手が届かないだろう。ドラマ版を全て観ていた自分でさえ、覚えていないことが多く、人様のブログを拝見して確認しながら観た。それだけ、彼らの過去は込み入っている。
屋敷の美しさは相変わらずであり、気品があって、鮮やかな緑に囲まれている。ダウントン・アビーというのは屋敷の名前である。グランサム伯ロバート・クローリーと長女メアリーを始めとするお屋敷の人々は、出費の心配ばかりしている。金がない、というより、屋敷の維持も含めて金がかかりすぎるのだ。
そこにある知らせが舞い込んでくる。国王夫妻の滞在である。事前に何の打診もなく、手紙でいきなり一泊を告げる。さすが、国王。それにより、更に出費が増す。軽騎兵のパレードもしなければならない。夜は晩餐会だ。日本で晩餐会と言えば焼肉のタレ(ん?晩餐館かも?)だが、劇中のは堅苦しいやつだ。
国王にはみんな、色々な思いがある。伯爵の亡き三女の夫はアイルランド出身だし、使用人の中には共和制を望む者もいる。
国王の来訪があれば、貴族も馳せ参じるわけで、貴族同士の因縁も再燃する。伯爵の母(マギー・スミス)が絡んでくるのだが、ドラマ版と変わらず言動が貴族的というか高飛車で笑える。辛辣で、わがままで、でもいい人である。
また、国王とともに、国王の執事・使用人・シェフもやってくる。もちろん、伯爵家の使用人より格上だ。両者の対立も面白い。伯爵家の執事バローも、意地が悪く、相も変わらずイケメンに目がなくて良かった。
国王来訪によるドタバタが伯爵家の特徴を浮き彫りにする。波乱万丈は望めないが、ファンなら、充分楽しめる作品である。