■2015年 スペイン
■監督 フェルナンド・レオン・デ・アラノア
■出演
□ベニチオ・デル・トロ
□ティム・ロビンス
□オルガ・キュリレンコ
■COMMENTS
時は1995年。
場所はバルカン半島の某所。
ちょっと前まで紛争地域だった井戸に遺体が投げ込まれ、水が汚染された。
「国境なき水と衛生管理団」のマンブルゥはロープで遺体を引き上げようとするが、途中で切れてしまう。さあ、困った。物資が不足した地域では、一本のロープを探すのさえ難しい。そんな映画である。
うわー、渋いなー
正直、そう思った。マンブルゥを演じるベニチオ・デル・トロも、渋い。おまけに仲間のビー(ティム・ロビンス)も、渋い。地域の住民らも、渋い。
誰かロープの代わりになるようなものぐらい持ってないのかよ、と突っ込みたくなるが、きっとないのだろう。あったら、映画が成立しない。渋い。
マンブルゥは保安関連の業務のため、国連軍の拠点に向かう。途中、小学生ぐらいの男子にピストルで脅される。紛争地域の現実か。
国連軍の拠点は元々ホテルで、食堂もある。本気になれば、ロープぐらい見つかりそうだが、マンブルゥは熱心に探そうとしない。井戸の遺体など、どうでもいいと思っている。おれの仕事ではない、この時点ではそういうスタンスだ。
一方、ビーはロープ調達のために近くの村に向かう。商店にはロープがあるものの、店主は売ってくれない。単に外国人に売りたくない、というわけではない。ギャングが絡んでいるのだ。つまり、地元のギャングが水を売るために、共用の井戸に遺体を投げ入れ、使えないようにしたのだ。どうりでロープが手に入らないわけだ。
事情を把握したマンブルゥはロープ調達に本腰を入れる。ま、ロープはそこらにある。空き家は多いし、その気になれば、すぐに見つかる。この際、誰かが天国に行くために使用したロープでも構わない。
ぼくはふとある昔話を思い出した。昔々、ナポレオンの兵士たちがロシアからの撤退時、飢えをしのぐために食った軍馬のせいでバタバタ倒れていった、という話を。
本作品はやるせない話である。そういうのが好きじゃないと、厳しいかもしれない。
個人的には、延々と続く無駄話で笑うことはできなかったけれど、徒労感は悪くないと思った。
劇中では、ラモーンズやバズコックス、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドなどの楽曲が使われている。ルー・リードの歌声が妙に沁みた。