■1953年(昭和28年)の日本映画
■監督 溝口健二
■出演
□京マチ子
□森雅之
□田中絹代
■COMMENTS
ほう、こういうのもアマプラにあるのか。観たのはずいぶん前だから、よく覚えていない。時間もあるし、観てみるか。といわけで、視聴開始。
時は戦国時代。所は近江。
兄弟はそれぞれの家族を残し、羽柴秀吉の勢力圏・長浜に出発する。兄は商売のため、弟は侍になるためである。
村では、戦に備える必要があった。当時の戦はひどいもので、人命はとても軽く扱われていた。村人にとって戦は、どうすることもできない天災のようなものだった。だが混乱は同時にビジネス・チャンスでもある。
兄・源十郎は混乱のどさくさに紛れて大金を得、村に帰る。
盆と正月が一緒にきたような贅沢をする源十郎一家。
弟・藤兵衛のほうは侍になることができず、村に戻ってきて、兄の仕事を手伝う。
兄嫁は地道に慎ましく生きて行きたいのだが、源十郎は金儲けのことばかり考えるようになる。
そんな折、柴田勝家の軍勢が村にやってくる。彼らは米を奪い、家を荒らす。村人は運べるだけの財産を抱えて山に逃げるが、兄弟とその家族は村に戻り、商品(焼き物)を持って琵琶湖を渡る。目的地は大溝。丹羽長秀が治めていて、賑わっている。
しかし希望はすぐに萎える。息も絶え絶えの男に出会ったためだ。男は海賊に襲われたと話し、くれぐれも気をつけるよう警告したあと、息を引き取る。源十郎は一旦引き返して妻子を故郷に置くと、再び大溝を目指す。藤兵衛とその嫁とともに。
大溝で商売は成功するものの、藤兵衛は侍になるために具足を買い、軍勢に身を投じる。夢とは厄介なものだ。妻が雑兵どもにさらわれ、襲われたことも知らずに。雑兵どもは一応、金を払うが、もちろん何の慰めにもならない。
一方、源十郎のほうは妻のために小袖を物色していた。そこに身分の高そうな女・若狭様とお付きの婆さん(乳母)が現れる。若狭様は少し前に市で源十郎から焼き物を買っていた。代金を支払うために、源十郎を屋敷に案内すると言う。源十郎はふらふらとついていく。
若狭様は当時どんなふうに受け止められたのだろう。
一目見て、ゾッとくるほどの不気味さである。
乳母もなかなかの存在感だ。
若狭様も乳母も、物の怪である。源十郎はすぐに若狭様の虜になる。わかりやすく言うと、ジャパニーズ・ゴースト・ストーリーだ。藤十郎はそうと知らず、色に狂う。現代映画だったら、いやらしいシーンになること間違いなしだが、本作品では上品にまとめられている。
その後、弟の藤兵衛は運よく侍として出世したものの、家来に乞われ、立ち寄った遊女屋では、悲しい再会が待ち受けていた。
結局、兄弟は高望みしたばかりに、図らずも、大切なものを犠牲にする。ここから人生訓を得るか、古典に手を伸ばして物語の世界に耽溺するかは、我々次第である。
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