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『この世の春』宮部みゆき / 新潮文庫


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この世の春(上) (新潮文庫)

この世の春(上) (新潮文庫)


作者は、宮部みゆきさん。


たまたま本書が家にあったから、読んでみた。謎が謎を呼ぶ展開なので、読書スピードは日に日に加速した。つまり有意義な時間を過ごすことができた。


この世の春(中) (新潮文庫)

この世の春(中) (新潮文庫)

この世の春(下) (新潮文庫)

この世の春(下) (新潮文庫)


さて、本作品の舞台は江戸時代の北関東に位置する北見藩という二万石の小藩で、当主の北見家は譜代大名という設定だ。作中では、北見家の家中で起きた、おぞましい出来事が明らかにされる。詳細を伏せて物語の概要を、私的に言わせてもらうと


①ビリー・ミリガンほどではない多重人格者

②ネクロマンサー(降霊術師)とその一族

小児性愛の呪いをかける女忍者(くノ一)


などの絡み合った、過去の忌まわしい出来事が、徐々に紐解かれていくのだ。


こう書くと、ただただ陰惨なストーリーを連想されるかもしれないけれど、そんなこたない。


善人がたくさん出てくるし、ほのぼのとした場面もたくさんある。また、時代小説ではあるが、対象は江戸時代の人間ではなく、あくまで現代人なので、多重人格者の主治医の見立ては科学的であり、論理性も備えている。ただ、その医者、呪術に関しては簡単に信用するのだが(笑)、まぁ、それはそれとして、本書は何より、読みやすいし、比喩で先の展開を匂わせてくれたり、重要な伏線をあえて強調してくれたりと、かなり親切に書かれている。疲れているときに読んでも、大した負担にはならない。上中下なのに、長さを感じない。冗長ではない。宮部みゆきさんの過去作にはどうしようもなく救いのないものもあるけれど、これは違った。救いがある。