1917
2名の英国陸軍兵が、将軍の伝令を伝えるため、前線で独軍と対峙する大隊に向かった。大隊は翌朝、独軍に総攻撃を仕掛ける予定だったが、それは罠だった。罠だということを知らせないと、大隊が壊滅する。それは避けねばならない。
つまり、兵士2名がお偉いさんの命令を味方に伝えに行くことが、本作品の全てである。
戦争とは、不自由なものだ。飯を食うのにも、排泄するのにも、歩くのにも、苦労を伴う。特に第一次世界大戦(WW1)はそれまでの戦争とは比べものにならないほどの犠牲を生んだ。本作品でも描かれている塹壕もひどい代物で、不潔極まりなく、病の温床となっていた。
そういった戦場を、伝令に付き添いながらワンカットに見える手法で撮影した。単線に載せられるものだけ載せ、載せられないものは大胆に省き、削る。視点のブレがないことにより、ある種の効果を生んでいることは間違いない。
WW1は参戦国にとっても兵士にとっても、すぐに終わるはずの戦争だった。また、戦争が経済的な停滞を生むことも、広く知られていた。反戦運動も、あった。なのに、開戦され、長きに亘り不毛な戦いが繰り広げられたのは、皮肉にも、愛国心のせいであった。
人々は戦わされる、のではなく、お国のために戦うようになったのだ。
(もちろん、戦争に行きたくない人もいただろうが、社会が戦争万歳の風潮になったら、個人はまず、逃れることなどできない。嫌な会社でさえ辞めることもできず、上司にぺこぺこして保身に励まなければ、生きていけないのだ。社会から抜け出すことなど、そうそうできることではない! が、それはそれとして…)
愛国心により、人々は武器を手に取り、勝つまで戦い抜こうとする。国内の婦人方も、愛国心から応援する。愛国的な兵士が英雄となる。みんな、褒められたい、認められたい、女にもてたい、成功したい。彼ら若者は大量の兵士となり、革新的な輸送システムにより、戦線に補充される。戦場で待ち受けているのは、手ごわい敵兵と毒ガスを始めとする新兵器である。
WW1の犠牲は甚大で、戦勝国の怒りは敗れたドイツに向けられたものの、敗戦国の憎しみは更に凄まじく、WW2という延長戦を生むに至る。