通常版は1981年公開。実物大の潜水艦のレプリカで撮影された。本作品ディレクターズ・カット版は3時間28分の大作である。
感想
・第二次世界大戦、ドイツ側からの視点。敗戦国が掲げるのは正義ではない。反戦である。
・冒頭の乱痴気騒ぎは、登場人物を把握するのにちょうどいいし、従軍記者がU96の艦内を案内されるところは、親切な解説になっていて、わかりやすかった。
・潜水艦に詳しくない自分でも、内部が狭いことぐらいは知っていたが、想像以上だ。士官の食事シーンでは、肩を寄せあって食べていた。暑苦しいこと、この上ないけれど、そんなことは言っていられない。食事が思ったよりうまそうで、意外だ。たぶん宇宙食より、断然ましだろう。
・乗組員は粗野で、下ネタ好きである。この点は想定の範囲内だ。猥談のない戦争映画は、かえって珍しい。彼らの楽しみは女と酒だ。平時はどこにでもいる若者かもしれないが、時代のうねりに巻き込まれて兵士となった。酔ってさらけ出して、“放水”することもいとわない。
・彼らは何のために苦しむのか。祖国のためか。ヒトラーのためか。第一線で戦う彼らは自国の戦運が傾きつつあることを、肌で感じている。友軍からのSOSがきても、駆けつけることはできない。敵(イギリス)以外の脅威もある。大西洋の時化、嵐、毛じらみ…
・駆逐艦との心理戦。耳を澄ませ、敵艦に着弾するかジッと待機しているときの間。限界まで潜水するときの緊張感。絶望的な浸水と故障。思わず、見入ってしまった。
・次第に、過酷な状況の中で、彼らはヒゲ伸び放題の薄汚れた姿になる。遭難者のようだ。まるで、遭難者がパニックに陥りつつもサヴァイヴする、受難の物語である。