フクシマ フィフティ
2011年3月、大津波の被害に遭った福島第一原子力発電所。
現場の人たちは原発被害を最小限に食い止めるべく、命を賭して奮闘した。
タイトルのフィフティは、50人もの東電の人々が事故の対応をしたからである。
2020年の日本映画
はじめに
ひじょうに難しい映画である。
たとえば、自分が外国人で、外国の映画として本作品を視聴したら、単なるパニック映画と捉えただろう。派手な作品の多い現代において、原発は題材としてどうなのかなーという疑問は残るものの、現場の勇敢な社員たちが、地域のため、家族のために、命を懸けて大事故をある程度抑えるというストーリーは悪くない。
しかしぼくは日本人だ。多くの情報に触れている。映画はエンドロールが流れて終わるが、福島の問題は終わっていない。震災から10年経ってもまだ、大きな問題が山積みだ。本作品は事実に基づいた映画とのことなので、その事実の是非が問われてくる。
原発事故の原因
誰もが知るように、大津波のせいだ。
想定外の大津波のせいである。そう、東電の想定を超えていたのだった。
東北電力と同程度の対策をしていれば、事故を防ぐことができたのに…
つまり
福島で原発事故が起きた原因は、東電の津波対策の甘さにあった。それは後からならどうとでも言える、という話ではない。地震多発国の海辺に原発を建設するのだから、それなりの対応をしてもらわないと困る。世間の皆様がどう考えられているかは知らないけれど、個人的にはそういう思いがあるので、正当な評価というのは難しい。
但し、映画を観ただけで事故の流れを把握することができる点は、評価できる。
以下、本編の流れをまとめてみる。
流れ
1号機から4号機が津波により浸水、停電が起こり、ポンプが動かなくなる。すると、水を送り出すことができなくなるため、原子炉を冷やすことができなくなる。どうにかして温度を下げなければならない。
政府や東電の上層部に対応する術はない。そんな状況下で、近隣住民の避難が始まる。
伊崎(佐藤浩市)を始めとする現場の人たちは、原子炉のベントを手動で開いて圧を下げるしか道はないと悟る。うまく行けば、放射能をまき散らすことになるものの、爆発は避けられる。もちろん命がけだ。
メンバーはベテランから選ばれた。若い人は先があるからだ。
彼ら決死隊は原子炉を制御するため、危地に乗り込む。
一方、所長(渡辺謙)は現場から少し離れた免震棟で指示を出していた。こちらは停電を免れていて、東京の政府や東電上層部とモニタを通して話すことも可能だった。現場と現場を知らないお偉いさん、つまり福島と東京が対立するのだが、作品としてはとても重要な場面と言える。彼らのやり取りを通して、総理・政府・東電上層部が愚か者である反面、現場の人々は概ね誠実で、勇気のある行動をとったことがわかる。
結果、爆発はあったものの、最悪の事態を避けられたのは、みなさん知っての通りだ。
よかった。多くの命が救われた。