上空でクロール

雑記ブログ。目標は100000記事。書きたいときに書き、休みたいときは休む。線路は続くよ、どこまでも。

待合室 3-14


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町の歯医者で診察を待っていた。

平日にもかかわらず、そこそこ混んでいた。お年を召した方が多かった。

 

自動ドアが開いた。でかいアディダスの白スニーカー。がっしりしている。ほぼ坊主だが、上のほうだけちょっと伸ばしていて、明るめのチョコレート色に染めていた。肌は浅黒い。マスクで隠されていない部分では、深い皺が波打っていた。受付女性が、朗らかに挨拶する。男は、受付女性に不貞腐れたような挨拶的会釈を返した。スニーカーの踵を擦り合わせて脱ぎ、昔の便所に置いてあったような緑のスリッパを履いた。受付を済ませると、おれの隣の隣にドンと座って脚を組んだ。立派な太腿を人差し指でとんとんし始めた。とんとん、とんとん、とんとんとんとん

 

待合室の空気に色をつけるとしたら、黒青色だ。男の苛つきが待つことの苦痛を引き立てた。自動ドアが開いた。おばあさんだった。受付の女性に挨拶すると、ゆっくりゆったり靴を脱いで、便所スリッパに足を入れた。ちまちま歩いて受付前、鞄をまさぐって診察券をカウンターに載せる。男が立ち上がる。どぞ、と言って、待合室隅の壁の掲示板に向かった。おばあさんはこくりと会釈して腰掛けた。隣のじいさんが呼ばれた。