東大卒、同名、同期の新入社員あきらとアキラ。両名、産業中央銀行入行当初から頭角を表す。
一方は町工場を経営する家に生まれた。技術はあっても経営は苦しく、銀行に融資を打ち切られて工場は倒産した。彼はそういった過去から、人を救う銀行員を目指すに至り、入行した。
もう一方の青年は大企業の御曹司であり、何不自由なく育った。クールで、シニカルな性格ではあるものの、家業がピンチに陥ると、芯の強さを発揮する。
池井戸作品に触れてきた方には、おなじみの設定、背景だけれど、なぜか毎回面白い。貧乏人も金持ちも、金に悩み、金に泣き、金に踊らされる。それでも、これまでの作品同様、良質な物語性に支えられていて、観ているうちに人間というものを信じたくなってくる。『正しく生きることが幸せにつながるんだ』と思わせられる。
明日にはまた捻くれたことを考えるかもしれないが、この作品を観た直後である今は、立派に生きるべく努力しようと素直に思った。いい作品でした。