事実に基づく…
COMMENTS
元IBF世界ライト級王者のビニー(マイルズ・テラー)は、WBC世界スーパーライト級のタイトルマッチに挑む。
相手はロジャー・メイウェザー
ビニーは苦労しつつも減量をパスすると、試合の前夜にもかかわらず、父親やガールフレンドとカジノでハメを外す。誰も彼らを止めない。カジノで勝ったあと、ホテルでガールフレンドと寝る。大物である。
だが次の日の試合では、かなり不利な展開で、KOしなければ、判定で負けるところまで追い詰められる。そうなったのは、メイウェザーが強いからだ。あとのないボクサーにKOされるわけがない。
結局、ビニーは判定で負けるが、彼にはガッツがある。負けてもすぐ次の試合のことを考える。周りは引退の流れを作ろうとするが、ビニーにその気はない。根っからのボクサーなのだ。
ただ、ビニーは連敗していて、人気に衰えが見えていた。マネージャーは利用価値のなくなりつつあるビニーの扱いに困ったのか、伝説のトレーナー・ケビン(アーロン・エッカート)を紹介する。ケビンはマイク・タイソンのトレーナーを務めたこともあった。彼は階級を上げるようにと、ビニーにアドバイスする。ベストな階級で戦うべきだ、と。ビニーはライト級より二階級上のジュニアミドル級(スーパーウェルター級の旧称)で戦うことに決める。
ビニーは打たれ強くないくせに、ファイタータイプである。本人がそれを望んでいるからだ。ケビンはまず、ビニーに顎が弱いことを納得させ、計算高い緻密なボクシングするように助言する。
その甲斐あって、ビニーはWBA世界ジュニアミドル級のタイトルマッチで強敵を圧倒、KOで勝利して再び世界チャンピオンになる。二階級制覇である。が、思わぬところに落とし穴が…
交通事故により首を骨折したビニーは当面歩くことができず、車椅子で生活することになった。もうボクシングどころではない。ガールフレンドは彼の元を去り、マネージャーとプロモーターは彼を完全に見捨てる。だがビニーは諦めない。歩行できるようになると、ケビンを誘ってトレーニングを始める。父親には反対されるが、言うことを聞かない。ビニーには、リングに立つ未来しか見えていない。
ビニーの人生はドラマチックだ。映画のような人生とはこのことだろう。劇中の試合(全てタイトルマッチ)には、どこか場末感があって垢抜けないものの、蓋を開けてみれば、ボクサーを扱った映画によく見られる悲劇や虚無感とは無縁の作品だった。
2016年アメリカ