COMMENTS
ウェンディ(ダコタ・ファニング)は自閉症で、『スタートレック』マニアだ。『スタートレック』のオリジナル脚本を書くほど、その世界に心酔している。脚本は映像化されてなんぼのところがあるし、どこかに発表しているわけでもないけれど、二次創作活動と言って差し支えはないだろう。
彼女は普段、施設で規則正しい生活を送っている。短時間ながらシナボンで接客もしている。意思の疎通に概ね問題はないが、ウェンディの場合、名前と場所を覚えることを嫌っている。どうしていいかわからなくなると、(言葉は悪いが)不穏になる。
ある日、ウェンディはパラマウント・ピクチャーズ主催の『スタートレック』脚本コンテストの募集をTVで知る。大賞の賞金は10万ドル。締め切りは一週間後。尺は一時間か二時間かわからないが、これから書き始めるとなると、なかなかタイトな執筆になる。
だが彼女の頭の中にはアイデアが既にある。スポックが時を超えて惑星連邦を救う物語を書こうとしている。
ウェンディには姉が一人いる。結婚していて、赤ちゃんがいる。姉妹は以前仲が良かったけれど、大人になった二人の間にはいくつかの問題が横たわっている。
ウェンディは家に帰りたい
施設での生活は好きになれない
自分の家がいい
姉はしかし、面倒を見ることができないし、ウェンディが帰ろうとしている“家”を売りに出している。姉にも事情があるのだ。ウェンディは『スタートレック』コンテストの10万ドルで家の売却を阻止するつもりだが、姉は取り合わない。感情的なやり取りののち、姉は帰る。
もちろん、ウェンディも傷ついた。そのせいで、大切なシナリオの応募を忘れてしまう。思い出したときには、郵送では間に合わない時間になっていた。夜更けだが、ウェンディは施設を脱け出し、脚本を届けるためにパラマウントへ向かう。
説明的なところは少なく、ウェンディの行動を通して、社会や人との違和感・距離感が描かれる。派手さはないが、人を不快にさせることもない、そんな映画だった。
(自閉症の知識がないので、その点についてはわかりません)
2017年アメリカ