監督
スティーヴン・ケイプル・Jr.
感想
ロッキー登場で、ジーンとくるのは世代のせいか。
頭髪はグレーで、ずいぶん老けたが、やはりロッキーはロッキーである。
スタローンでもなければ、ランボーでもない。
ここにいるのは、紛れもなく、ロッキー・バルボア。元世界チャンプで、伝説のボクサー、ロッキー・バルボアである。耳を澄ませたら、ロッキーのテーマ曲が聴こえてきそうだ。
但し、本作品の主役はクリード。アドニス・クリードだ。彼は序盤で早々に世界チャンピオンになる。アポロやロッキーが巻いたベルトを、アドニスも手に入れる。
話はここからである。
アドニスの成功とは対照的な環境で、ドラゴの息子ヴィクターはトレーニングに励む。肉体労働をしながらリングに上がる日々。ハングリーだ。昔のロッキーもまた、ハングリーだった。
ヴィクターは体格、スピード、パワーを兼ね備えた、素晴らしいボクサーだ。アドニスが彼と戦うことを、ロッキーは全力で止める。だが、アドニスにも意地がある。因縁の相手に挑戦されて、逃げたくはない。ロッキーに、セコンドにはつかないと言われても、決意は変わらない。
ロッキーは弟子が心配で仕方ない。
TVでアドニスVSヴィクターの試合を観戦。ヴィクターは強すぎる。格が違う。アドニスを圧倒する。が、ダウンを奪ったときに、勢い余って左ストレートを放つ。失格である。どちらが強いかは証明することができたけれど、王位は動かない。
とはいえ、ぼろ負けしたアドニスは自信を喪失する。リングを避ける負け犬になっちまう。
話はここからである。
アドニスに娘が生まれ、ロッキーとの絆を再確認。ボクシング映画の主人公が、このまま終わるはずがない。あのロッキー・バルボアの弟子が、負け犬のまま終わるわけがない。終わるわけが、ないではないか!
アドニスの父とヴィクターの父は、『ロッキー4』で戦った。当時、ロシアはソヴィエトという共産国家である。アメリカとソヴィエトは冷戦の渦中にあり、後者の代表だったドラゴはソヴィエトを象徴する存在、アメリカにとっては敵役であった。
本作品では、イデオロギーによる対立は示唆されていない。ヴィクターは反米ではないし、ロシア人という理由で不当な扱いを受けることもない。彼は苦しい人生に耐え、やっとチャンスを手に入れた、才能ある若者だ。彼の夢は叶うだろうか?