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いきなり、おっさん(ショーン・アスティン)の寝起きシーン。
オシャレでもなく、卑猥でもない。静かで、地味な一日の始まり。
おっさん=ミッチはネルシャツを着る。セダンでボートを運ぶ。目的地は湖だ。車もボートも古ぼけている。ミッチは裕福ではない。元フリーターの無職だ。湖に向かう途中に寄った高齢者施設で、そこに入所している母の着替えを補充したとき、職員から「うちで働かないか」とスカウトされる。アメリカでも介護はある種のセーフティ・ネット的な役割を果たしているのだろうか。よくわからない。万年人手不足という点は我が国と同じらしい。が、本作品は介護映画ではない。
湖に到着し、ミッチはボートに乗り込む。湖心に向かって、ボートをかっ飛ばす。かぶっていたキャップが風で飛ばされる。ネルシャツおじさんの表情は険しい。ちっとも気持ちよさそうじゃない。人生をエンジョイしていない。
ボートが何かの破片にぶつかったので、ミッチは急いで立て直そうとするも、止まってしまう。見渡すと、セスナの翼にしがみついて浮かぶおっさん(クリス・マルケイ)を発見する。反応はない。気を失っているのだ。おっさんは苦労して、おっさんをボートに乗せ、手当てをしてやる。ロマンスは生まれない。おっさんが美女を助けて惚れられるストーリーなら勇気も湧いてくるが、どうやらそういうお伽噺ではないようだ。まさかおっさん同士の恋でもあるまい。
新参のおっさんは目覚めると、ナイフでミッチを威嚇する。警戒しているのだ。このおっさん、ひじょうに怪しいが、ミッチは柔和なおっさんなので、大きな問題にはならない。
新しいおっさん=ケリーは偉そうだし、すぐ怒る。ボートが故障していたので、ミッチはやむなくオールで漕ぐのだが、ケリーはケチをつけるだけだ。
以降、ひとつボートの上で、おっさん2名が交流する。
映画が進むにつれ、2人の過去が明らかにされ、湖にきた目的が明かされ、ささやかな結びつきが生まれる。緊張感はあまりない。アンニュイなおっさんモノである。決してつまらないわけではないと思えるのは、ぼくもおっさんだからかもしれない。
ショーン・アスティンと言えば、パティ・デュークの長男で、『グーニーズ』のマイキー役でも知られている。海賊の財宝を見つけたそのときからずいぶん時は経つけれど、本作品では、ナイーブで不運なおっさんをうまく演じているし、まだまだやれそうでよかった。ちなみに『グーニーズ』でマイキーの兄を演じたのは、ジョシュ・ブローリンである。
2014年アメリカ