懐かしの映画。当時、ケビン・コスナーの勢いはすごかった。説明するのが大変なぐらい色んな作品に出演している。イーストウッドの活躍は言わずもがなだ。
『パーフェクト・ワールド』の脚本はジョン・リー・ハンコック。彼がのちにマイケル・キートン主演『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』でメガホンをとる。知らぬ人のいない世界的なハンバーガー・チェーン、マクドナルドの草創期を扱った作品である。
『ファウンダー』はいい作品だ。マックの看板を見かける度に、かわいそうなマクドナルド兄弟が脳裏に浮かんでくる。マイケル・キートンもよかった。
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親子の情というのは複雑だ。虐待を受けつつも親を愛し続ける子もいれば、子を憎悪と支配欲の捌け口にする鬼もいる。
ブッチ(ケビン・コスナー)は親に恵まれなかったが、心から恨んではいない。親との薄い接点を大切にしている。ブッチにとって、家族とはかけがえのない幻想であり、優しさの源泉になっている。
だが、単なるいい人ではない。
ブッチは脱獄犯だ。逃亡の途中で少年フィリップを人質に取る。脱獄犯は大抵刹那的、後先を考えないタイプが多い。ショーシャンクのデュフレーンとは違う。逃げたところで、普通はすぐに捕まる。脱獄して逃げ切れるほどの能力があるなら、そもそも捕まることはなかっただろう。
ブッチの脱獄は絶望的である。
観客にはそれがわかる。コスナー演じるこの人は幸せになれない、と。そんな状況にありながらも、ブッチはフィリップに優しい。フィリップも心を開いていく。フィリップは八歳の男の子だ。自分の足で世界を歩き始める年頃だ。ブッチは何があっても、子どもは傷つけない。彼には目的がある。行きたいところがある。目的地はアラスカだ。アラスカに行くことで、何かが満たされるのだ。
ブッチの脱獄は絶望的である。