もしもオズワルドが無敵だったら、こんなふうになっていたかもしれない。
オズワルドこと、リー・ハーヴェイ・オズワルドとは、JFKを暗殺したとされる人物。彼による犯行が不可能であったことは、今や常識である。
オズワルドは狙撃が下手くそだったらしいが、本作品の主人公スワガー(マーク・ウォールバーグ)は、元海兵隊の狙撃兵。天才的なスナイパーだ。
彼は、元軍人のジョンソン大佐(ダニー・グローヴァー)という人物から、大統領の暗殺阻止への協力を求められ、承諾する。だが大統領の遊説先で彼を待っていたのは、裏切りと陰謀だった。
スワガーは一緒に警備をしていたはずの警官に、至近距離から撃たれた。
大統領も狙撃されるが、弾はそれて、隣にいた賓客を貫いた。賓客は亡くなった。
スワガーは一転して、大統領暗殺未遂の容疑者になっていた。が、優秀な兵士である彼は銃創に悩まされつつも、厳重な警察の包囲網をくぐり抜ける。
彼が向かったのは、亡くなった戦友の恋人サラ(ケイト・マーラ)の家だった。スワガーは事情を打ち明けて、匿ってもらう。傷の手当てをしてもらう。恋愛要素がなくて、好感が持てた。
復活したスワガーは、新米FBI局員メンフィス(マイケル・ペーニャ)を加え、強大な敵に立ち向かう。
ここからは彼の独擅場だ。
逆境から這い上がる孤高の強者は、野郎どもの憧れでもある。このままいけば、素晴らしいアクション映画だった。そう、このままいってくれれば…
問題は、ボイスレコーダーだ。
スワガーは雪山で黒幕どもを追い詰める。悪事の証拠であるボイスレコーダーを渡せ、と奴らは要求する。スワガーは拒絶。そして何を思ったか、大切な証拠品を燃やしてしまう。彼は言う。
“内容が危険すぎる”
“俺たちも闇に葬られるぞ”
いやいや…
今さら何を? 奴らを生かせば、いずれ狙われるじゃん? 散々暴れ回っといて、なんで? こいつらやっちまえば、万々歳じゃん!
ぼくはそのシーンで一気に冷めたが、観終わったあとに、ふと思った。
これは好意的な解釈かもしれないが、もし雪山での一連の出来事にスワガーの真意が隠されていたら、なかなか面白い作品である。
つまり…
①ボイスレコーダーには、戦友が亡くなったときの真相も語られていた。それが明るみになれば、戦友の恋人サラは深く傷つく。スワガーはそれを避けたかった。
②雪山でスワガーが私刑、要するに無双しなかったのは、メンフィスの手柄にするためだ。メンフィスはFBIに従わないで、スワガーと行動をともにしていた。彼がFBIに戻るには、それなりの理由がなければならない。スワガーはそれを与えた。
③また、自身の暗殺未遂容疑を公の場で晴らすためには、ここで実力行使に及ぶわけにはいかなかった。一度捕まって、疑いを晴らす必要があった。
証拠品を燃やしたのは、サラのため。
FBIを呼ばせたのは、メンフィスのため。
おとなしく捕まったのは、自分のため。
本作品はどうしても結末に引っかかりを感じるのだが、わざとそういうふうに作られた可能性も…
いずれにせよ、頭を空っぽにして観れる映画ではなかった。自分なりの”答え“を見つけるまでは、けっこうモヤモヤしてました(笑)