『K-19』とは、ソ連の原子力潜水艦K-19の、原子炉の故障を扱った作品。
K-19はそもそも、いわくつきの潜水艦である。建造に関わった者が何人も亡くなったことから、The Widowmaker(未亡人製造艦)の異名を持つ。
ロシアでは、船の洗礼をする(本作品を観たとき初めて知った)のだが、そのときにも、不吉なことがあった。
女性がシャンパンを船体に当てて瓶を割る儀式で、こともあろうに、瓶が割れなかったのだ。それを見た、将校・兵士達のテンションはだだ下がりだった。
人事的にも複雑なことになっていて、艦長だったポレーニン(リーアム・ニーソン)は留まるものの、新たな艦長ボストリニコフ(ハリソン・フォード)が着任する。ポレーニンはボストリニコフの副官となる。
ややこしい。
潜水艦はそこそこクールだが、故障箇所が多すぎる。ポレーニンは無能な整備兵のせいにしていたが、最新鋭の潜水艦をそんな輩に任せる軍にこそ、問題がある。
但し、これはアメリカ映画である(セリフは英語)。当然、ソ連批判・共産党批判満載だが、イデオロギー的な言説に目新しさはない。大切なのは、原子炉故障に付随して起こる人間ドラマだ。
K-19は腐っても、原子力潜水艦。原子炉がいかれ、メルトダウンしたら、ヒロシマ以上の核爆発が起こる。近くでは、アメリカ海軍の駆逐艦が哨戒している。もし爆発したら、駆逐艦への攻撃と見なされ、全面戦争を引き起こしかねない。核戦争は何としても、回避しなければならない。
対応を迫られる艦長・士官。
原子炉の修理を命がけで、まともな防護服も着ないで行う勇敢な兵士達。
放射能の恐怖。
極限の状況下で、彼らの取る行動は、実に軍人らしかった。