■2018年の日本映画
■監督 福澤克雄
■出演
□阿部寛(加賀恭一郎)
□松嶋菜々子(浅居博美)
□溝端淳平(松宮脩平)
■COMMENTS
原作・東野圭吾
冒頭、まだ子供だった恭一郎を残して家出した母の、家出後から心不全で亡くなるまでの生活が描かれる。この時点で、かなり重い。ミステリーだからフワフワしているわけがないのだが、それにしてもヘビーだ。これからどんな凄惨な事件が起こるのだろうか。身構えたが、まずは人物描写だ。
家出した母は東北の場末のスナックで働き始め、海辺のアパートで暮らし、ある原発作業員と愛し合うようになった。それはささやかながら、温かい日々だった。あとでそのことがわかる。というのも、恭一郎の母の件が、現在の殺人事件に絡んでくるからだ。
『砂の器』を想起される人もいるように、悲しい人間ドラマが幾重にも重ねられる。追い詰められた人々が、何の余裕もなく、ただ大切な人を守るために人をあやめる。まともに普通に生きてきた人が、善悪とは別の基準で行動する姿を見せる。
とはいえ、そんな人々にも、幸せな瞬間は確かにあった。綱渡りの生活に時おり射し込む光。闇を抱え、這うようにして生きながらも、人は愛することができるし、笑うこともできる。
一連の事件は二組の家族が重なり合った故に解決することが可能だった。もし恭一郎の母と原発作業員が深い仲にならなかったら、事件は明るみに出なかったかもしれない。いや、恭一郎の推理がなければ…、いや、そもそも原発作業員が娘に会おうとしなければ…
祈りの幕が下りると同時に、様々な思いが交錯する。