『舟を編む』2013年 日本 / 監督 石井裕也
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What's it about ?
不器用な青年が辞書の編纂に挑む物語。
CAST
馬締光也(まじめ・みつや)
玄武書房社員
(松田龍平)
西岡
玄武書房辞書編集部の若手
(オダギリジョー)
荒木
玄武書房辞書編集部の責任者
(小林薫)
松本先生
辞書の監修を担当
(加藤剛)
かぐや
マジメの下宿先である早雲荘・大家の孫娘
(宮崎あおい)
COMMENTS
時は1995年。
玄武書房辞書編集部では、『大渡海』という中型辞書の編纂に着手していた。
ベテランの荒木は定年間近な自分の代わりとなる人間を探す。彼の目にとまったのは、対人能力は低いものの、大学院で言語学を修了した馬締(マジメ)だった。
マジメは営業部で働いていたが、コミュニケーション能力に乏しく、使える社員ではなかった。評判も悪かった。
向いていない仕事をしていた本人もつらかっただろうが、荒木に辞書編集部に引っ張ってもらって、やりがいを見出だすことができるようになった。サラリーマンとしては、かなり幸運なことである。
辞書を作るのには、膨大な時間がかかると、劇中で語られる。小型の辞書でも、完成まで7年。『大辞林』にいたっては、28年もかかったそうだ。
28年というと、新卒で辞書作りに携わったとしても、できあがるころには50歳である。大プロジェクトなのだ。
マジメは地道な作業に向いているようで、辞書作りに没頭する。
そんなある日、下宿先で大家の孫娘(かぐや)と出会う。マジメは恋をする。不器用な恋だ。お相手のかぐやは祖母(大家)と同居して、板前の修行を始めた。マジメもかぐやも求道者のように見える。とはいえ、(大家も言っていたが)、若いときに一生の仕事を見つけられることは幸せなことである。
マジメが恋にうつつを抜かしているちょうどそのときに、辞書編集部に苦難が訪れる。『大渡海』作りが中止されそうになったり、人員を削減されたり。原因は採算がとれないことである。もちろん、そんなことでマジメの信念は揺るがない。西岡の気遣いもあって、マジメは辞書作りを続けることができた。
かぐやとの恋も進展し、マジメは恋の意味を知るが、それにしても辞書作りの道は険しい。地味で地道な作業の繰り返し。同時進行で、いくつもの作業をこなさなければならない。とにかくやることが山積みで、時間がかかる。
それから13年後
やっと、完成が見えてきた。マジメは主任になっていた。いくら月日が経とうと、辞書編集部の人々は辞書作りに燃えていた。決して、情熱を失わない。彼らの充実感が伝わってくる。
ある作家が『広辞苑』を熟読していた、というエピソードを何かで見た記憶がある。さすがに辞書を読みたいとは思わないが、この映画を観て、辞書に対する見方は変わったような気がする。