人間ドラマ
韓国初の陪審員による評決を再構成した映画。陪審員は8名。8番目に選ばれた青年が、周囲の思い込みを変えていく。
被告人は、母を手にかけた容疑で逮捕された中年男性だ。彼は義手を装着していて、働いていなかった。家は団地で、かなり貧しかった。彼は自白していて、有罪は確実視されていた。
8番目の陪審員は直感的に抱いた疑問を検証し、合理的な疑義として提示する。有罪と決めつけていた他の陪審員らは次第に、有罪への疑いを深めていく。とはいえ、有罪派と無罪派の対立はどぎつくなく、流れとしては自然である。
『12人の怒れる男』『12人の優しい日本人』など、陪審員制そのものについての映画が好きな方なら、じゅうぶん楽しめる内容。
ムン・ソリはアンニュイだが、芯の強い裁判長を演じていて、最後はシッカリしめてくれた。韓国の貧困問題・根深い差別も、観ていてよくわかる。良質で素直なヒューマン・ドラマである。