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医療保険。
よくわからない。深く考えたことはない。
知らなくても、物心ついたときには加入していたし、今も当然のように加入している。保険のお陰で、最小限の負担で医療を受けられる。加入していなかったら、病院に行くことを諦めたり、ためらったりすることもあるだろう。金がかかりすぎるからだ。
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アメリカには約5000万人の医療保険未加入者がいる。本作品を観なければ、そんなの知らなかった。5000万人。べらぼうな人数である。大都会カナガワ民より若干多いぐらいか…いずれにせよ、大した人数である。
未加入の人は医療に金がかかることを痛いほど知っている。手術など、オチオチ受けられない。ちょっとした外科手術で100万くらい軽く飛んでいく。
但し、医療保険に入っていても、高額な手術を受ければそれなりに請求されるし、保険会社があれこれ理由をつけて支払わないケースもある。国が医療保険を扱わないアメリカのような国だと、国民皆保険の国のように、手軽に、それこそ息を吸うように、保険を利用することはできない。
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監督ムーアの矛先は保険会社に向かう。そしてこの問題だらけの制度を築いたのは、ニクソンだと結論づける。
製薬会社・保険会社は膨大な利益を収め、政治家どもを献金浸けにしていく。亡者どもはあっけなく、合法的に取り込まれていく。もはや彼らの正義と場末の正義は違う。色とりどりの正義が生まれ、くっついたり離れたりする。だんだんどちらが正しいのかわからなくなってくる。世界は複雑で、不鮮明だ。
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このテーマで正直2時間は長い。中盤からはお得意の、自国と他国のシンプル比較論になる。他国のメリットを列挙して、自国を批判する。問題提起にはなっているから、“注目作”としては成功しているのかもしれない。