The Golden Age
1998年公開の『エリザベス』の続編。監督は前作同様シェカール・カプール。
エリザベス1世を演じるのも前作と同じく、ケイト・ブランシェット。
腹心のウォルシンガム役も、前作に引き続き、ジェフリー・ラッシュ。
2007年公開
エリザベス1世は人気もあり、偉大な人物だった。ケイト・ブランシェットが演じるエリザベスも、貫禄があり、時として才気と愛嬌を覗かせる魅力的な女王だ。
本作品は3つの大きな流れによって構成されている。
①エリザベスとウォルター・ローリー、女王の侍女ベスの三角関係
ウォルター・ローリーという人物はイギリスではよく知られた人物。プロテスタントであり、探検家であり、軍人にもなった。本作品に登場するときはスペインに対して海賊行為を働く、いかがわしい男前で、すぐさま女王を虜にする。同時に、侍女のベスも彼に惹かれるが、激しい三角関係になることはなかった。いや、エリザベスはその三角関係に起因してローリーを投獄しようとするが、映画ではうまく省略されている。実際のローリー卿とベスは、終生、愛し合うことになる。
②元スコットランド女王メアリー・ステュアートとカトリック派の陰謀
ややこしい話になるが、イングランドはカトリックの国だった。それをプロテスタントにしたのは、エリザベス1世の父ヘンリー8世である。ヘンリー8世は王妃との離婚を望んでいたが、教皇が認めてくれないため、新教を興して離婚に踏み切った。つまり、離婚するために宗教改革を行ったのだった。ヘンリー8世はそれによって生じたゴタゴタを処理することなく、次のメアリー1世が王座に就く。
メアリー1世はエリザベス1世の異母姉だが、カトリックで、プロテスタントを迫害した。その過酷さから、ブラッディ・メアリーとも呼ばれる。スペイン王フェリペ2世と結婚したが、それは国内貴族との婚姻による混乱を恐れたためであり、イングランドの独立性は担保されていた。つまり、フェリペ2世にイングランドの王位継承権はなく、共同統治可能な期間もメアリー1世が在世中のみ、という取り決めがあった。
メアリー1世の死後、エリザベス1世が女王となり、宗教問題にケリをつけた。簡単に言うと、プロテスタントであるエリザベス1世が教義なども整備して、イギリスの国教会を成立させた。
とはいえ、カトリックを信奉する人々もたくさんいた。メアリー・ステュアートもそのうちの一人であり、エリザベス1世の庇護を受けつつも、エリザベスの廃位を目指す陰謀に加担した。
おわりに
エリザベス1世は〈処女王〉と呼ばれるが、ロマンスはけっこうあった。未婚だったため、テューダー朝は途絶え、メアリー・ステュアートの子孫が以後、王の座を継いでいく。それもまた、歴史の皮肉か。
とはいえ、エリザベス1世は英雄であり、演じたケイト・ブランシェットも素晴らしかった。感情の振れ幅は大きく、女性らしく、しかし暴君には見えない。苦悩と強さ、優雅な衣装と振る舞い、美貌…
今、無性に、前作『エリザベス』を観直したい。