本作品は、十二国記シリーズの最新作。
戴に戻った泰麒と、失踪した王を探す臣ら、それからその王と謀叛人を巡る、重厚なファンタジーである。
始まりはすこぶる暗い。国は荒れ、絶望的な状況である。全体的なトーンも陰鬱で、しかも全四冊というボリュームだが、それでも一気に読みたくなる。実際、一気に読んだ。十二国記シリーズはいつも、そうだ。先が気になって仕方ないからだ。
三巻に入るまでは、シリーズでいちばん自分に合わないかもと心配になるときもあったけれど、三巻の中盤から最終巻の終わりにかけては没入することができた。正直、まどろっこしいところもあったし、また、何度か熱いものが込み上げてくるときもあった。
思えば『魔性の子』を読んだのは学生の頃だった。当時、それは十二国記の外伝だった気がするのだが、あるいは自分の勘違いかもしれない。とにかく、おっさんになった今でもこのシリーズが読めるのは感慨深いし、懐かしさに浸ることができた。
『月の影 影の海』 から『魔性の子』、あとは発表順に読んでいった記憶がある。今からこのシリーズに触れることができる人たちはある意味、幸せ者である。初めて読むときのワクワク感。自分がそれを味わうことはもうない。