■2019年 日本映画
■脚本と監督 三谷幸喜
■出演 中井貴一 ディーン・フジオカ
■COMMENTS
“記憶にございません…”
そのセリフは大いに流行ったという。
昭和51年、ある人物がロッキード事件の証人喚問で放ったセリフだ。証人喚問では、虚偽の証言をすると偽証罪に問われる。かといって、自身や仲間の不利になることも言えない。困った末に、肯定でも否定でもないそんなセリフが口から出てきたものと思われる。
本作品ではしかし、苦し紛れの言い訳ではない。
支持率2.3%という史上最低の総理大臣・黒田(中井貴一)が本当に記憶喪失となり、総理大臣である自分を忘れてしまう。黒田は国民から相当嫌われているのだが、そのことさえ覚えていない。わかりやすく言うと、小泉フィーバーの逆である。歩いていれば、石を投げられるレベルだ。なぜそんな政権が維持できているのかは疑問だが、深く考えてはいけない。これはコメディ作品なのだ。
邦画を視聴すると、かなりの確率で中井貴一に当たる、と言われているかは不明だけれど、総理を演じる中井貴一(敬称略)は安定感・安心感抜群で、秘書官のディーン・フジオカは男前だ。他にも、草刈正雄、佐藤浩市、小池栄子、石田ゆり子、吉田羊、斉藤由貴、木村佳乃など、出演陣は豪華だ。邦画・TVドラマが大好きな人にはたまらない布陣である。
黒田総理は政治家としても、夫としても、父としても、最悪だったものの、記憶を失うことで毒は抜けていく。誠実な総理大臣になる。誠実=奇人ということがよくわかる。いささかうまくいきすぎではあるが、気楽に楽しめる作品であることに違いはない。けっこう笑いました。
ゴルフ・クラブの握り方と言ったら…(笑)