上空でクロール

介護福祉士による雑記ブログ。主に、映画・本・時事。目標は1000記事。書きたいときに書き、休みたいときは休む。線路は続くよ、どこまでも。

『MISS EVERS'BOYS』


スポンサーリンク

■97年 HBO製作のテレビ映画
■監督 ジョセフ・サージェント
■出演
アルフレ・ウッダード
ローレンス・フィッシュバーン

 

 

■COMMENTS

 

1930年代、アフリカ系アメリカ人の致死率は白人のそれと比べて高かった。それは白人より劣っている証拠と捉えられた。

 

当時、アフリカ系の社会では、梅毒が蔓延していた。それが白人に広がることを危惧した政府は、特別な治療のプログラムを実施することを決定した。

 


本作品の舞台となる、アラバマ州メイコン郡も、梅毒のみならず恐慌の影響もあり、散々な状況だった。

 

主人公のエバーズは看護学校を出た看護婦で、優秀、弁も立った。

 

医師はまず感染状況を把握する必要があった。

エバーズはその方針に従い、アフリカ系アメリカ人たちに無料で診察を受けるよう説いてまわる。途中、小学校の元同級生ケイレブ(ローレンス・フィッシュバーン)に会い、診療にきてもらう。

 

エバーズ自身も、メイコン郡出身のアフリカ系アメリカ人で、人々のために熱心に活動した。

 

エバーズの熱意のお陰もあってか、アフリカ系の人々は続々と診察に訪れた。

 

ナース・エバーズ、大人気である。

 

ただ、ケイレブもその仲間も、梅毒に罹患していた。治療法はある、とエバーズは説明するが、ケイレブは不信感を抱く。抱くものの、エバーズへの思いのほうが、より強い。エバーズもまた、ケイレブに惹かれていた。

 

 

そんなタイミングで、梅毒の治療プログラムの中止が決められる。州政府に予算がないからだ。それにより、アフリカ系アメリカ人に治療を施すことができなくなる。

 

医師はなるべく多くの人を治療をするために、人件費を削ることしかできなかった。エバーズは解雇され、白人の屋敷でメイドになった。

 

 

やがて完全に治療は行われなくなったが、医師(アフリカ系と白人)二名はワシントンのお偉いさんから、ある提案を持ちかけられる。

 

それは予算を出す代わりに、アフリカ系梅毒患者の経過観察を行い、白人の感染者の辿る経過と比較するという、差別意識に基づいたプログラムだった。大切なポイントは、治療を一切行わないことである。

 

医師らは半年から一年そのプログラムを実施したら、また予算がついて、再び治療が再開できると解釈して提案を受け入れた。

 

エバーズは病院に呼ばれて医師から新たなプログラムの説明を受けたとき、看護婦に復帰するか大いに悩んだが、ケイレブを始めとする人々から目を背けることはできなかった。彼女は言わば、放置プログラムのために復職した。彼女を待ち受けていたのは葛藤と苦悩だった。

 

結局、半年経っても、一年経っても治療は再開されなかった。十年経ってペニシリンが手に入るようになっても、治療は行われなかった。医師も看護婦もペニシリンのことは当然、知っていた。だが医師二名にとっては、目の前の患者より、アフリカ系も白人も同じ経過を辿る同じ人間と証明することのほうが、大切なことになっていた。エバーズには、ペニシリン投与は重大な副作用を引き起こすと言って納得させた。何の根拠もなかった。

 

 

ところで、ケイレブは陸軍に志願して兵隊になっていた。ほかの病院でペニシリンの投与を受けて回復したため、入隊することが認められたのだ。ケイレブはローレンス・フィッシュバーンだし、主要人物だし、感動的に逝くと思い込んでいたので、全快したことは嬉しい誤算だった。

 

 

 

 

Miss Evers' Boys (2002)

Miss Evers' Boys (2002)

  • メディア: DVD
 

 

 

40年代になると、どの病院でもペニシリンを受けることは可能になったようだが、例の放置プログラムの参加者への投与は禁止された。各病院に参加者のリストが配布され、訪れても門前払いされた。治ったら、観察が途中で終わるからだ。わかりやすく言うと、梅毒で亡くなって解剖するまで、観察は続くのだ。

 

彼ら参加者は有効な治療をされることは一切なく、病状は徐々に進行し、ある者の顔には腫瘍ができ、またある者の認知面には問題が見られるようになった。

 

エバーズには色々な選択肢があったけれど、結局、患者に寄り添って生きることを選んだ。それはプログラムに関わった者として、しなければならない償いでもあった。