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映画の私的感想ブログ

『負け犬の美学』フランス/2017年


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負け犬の美学(字幕版)

負け犬の美学(字幕版)

  • 発売日: 2019/06/12
  • メディア: Prime Video



45才のミドル級ボクサー・スティーブ(マチュー・カソヴィッツ)。入場したときに、ややブーイングを浴びる程度の、箸にも棒にもかからないロートルだ。彼には華やかさも、輝きもない。試合後にタバコを吸う姿が、哀しすぎる。会場のスタッフさえ、彼の顔を覚えていない。


戦歴は13勝3分33敗


ティーブには娘がいる。娘が今度試合を観に行きたいと懇願するが、全力で拒絶する。娘にカッコ悪いところは見せたくないのだ。


もちろん、ボクシングだけでは食べていかれないので、試合のないときはスーパーや飲食店で働いている。夢を追うのは素晴らしいことだが、当然リスクもある。スティーブは試合に出るのさえ、難しい。プロモーターに連絡して、もし棄権する選手がいたら出場させてほしいと頼みこむ。つまり、誰にも必要とされていない。


そんな状況の中で、スティーブは金になるチャンスを得る。元チャンピオンの復帰戦に向けてのスパーリング・パートナーだ。スパーリングは試合より危険な側面がある。ぼこぼこにされるからだ。試合以上に殴られる。だがスティーブは金が欲しい。できたら、娘に本格的にピアノを学ばせたい。そのためには金がいる。


元チャンプ・タレクはストイックだ。三人のスパーリング・パートナーと代わる代わる戦う。スティーブは全く奮わず、ポンコツとタレクに罵られ、初日でクビになる。微かな希望さえ、簡単に打ち砕かれるのは、彼の見通しの甘さか。いや、選択肢がなさすぎて、一縷の望みにすがることしかできないのだ。スティーブは練習相手を続けさせて欲しいとタレクに直訴して、なんとかクビは撤回される。


ティーブはボクサーとして負け続けてきた。33敗しても、やめなかった。なかなかの負けっぷりである。でも好きだから、やめなかった。長い間、ボクシングに身を捧げてきた。その経験からくるアドバイス。それが、タレクの心に響く。





本作品は地味なボクシング映画だ。リアルな世界は乾いていて、冷たく、安易な奇跡を寄せつけない。