ドイツ産のクライムコメディ(2014)
冒頭は銀行のシーン。銀行強盗の立てこもりだ。外にはパトカーが何台も停まっていて、警察官が犯人に投降を呼びかけている。映画やドラマでおなじみのシチュエーションだ。
劇中では一旦その72時間前に、時が戻る。
主人公は銀行員ティル。普段は銀行で個人向けの融資を担当している。平たく言えば、金貸しである。家に帰れば、些事に追われる。奥さんはきれいで、子供はかわいいが、甘い生活というわけにはいかない。幸福は点か、線か。このドイツ人は人生を楽しんでいない。生活のために、したくもない、つまらない仕事をしている。普通の人だ。
そんな彼が強盗に遭う。銃を突きつけられ、車の運転を命じられる。そのまま、強盗の隠れ家へ直行。強盗ナッポが銀行で盗んだ金額はおよそ18000ユーロ。1ユーロは約120円。人生をかけるほどの額ではない。わざわざ強盗を選ぶぐらいだから、ナッポは刹那的な奴なんだろう。よく言って、ワイルドな男か。
ナッポもティルも境遇は違えど、両者ともに冴えない中年であることに間違いない。二人は逃避行の過程で交流を深める。ティルにとってそれは自分を取り戻す旅であるとともに、犯罪行脚でもあった。
おっさんになると、友達・仲間はできにくい。若い頃そばにいたような存在を作るのは難しい。家庭があったり、生活秩序ができあがっていたりと、理由は色々あるが、大抵、友と遊び回る時間はなくなっている。ふと気がついたら、老後を心配するようになっている。人生、楽しめるうちに、楽しめるときに、楽しんでおかないと損である。強盗の巻き添えはごめんだが(笑)
強盗ナッポ役のモーリッツ・ブライブトロイは『ラン・ローラ・ラン』に出演していたらしいが、全く思い出すことができなかった。『ラン・ローラ・ラン』は工夫された作品だが、本作品も悪くない。特にナッポの彼女(ヤスミン・ゲラート)が下品で素敵だった。