事実に基づく…
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ボストン・グローブ紙を刊行するグローブ社は、ニューヨーク・タイムズ社の傘下となっていた。そのため、タイムズから局長が異動してくることもあった。今回赴任してきたのは、バロン局長(リーヴ・シュレイバー)である。
リーヴ・シュレイバーと言えば、『スクリーム』『ソルト』で小者感満載の怪しい役をこなしていたが、本作品では、深みのあるダンディなマスコミ人を演じている。
ボストン・グローブ紙は地元に根差した新聞で、“スポットライト”という特集欄がある。スポットライトは四人の記者によって運営されている。強めのネタを扱い、極秘に取材し、連載する。編集長はロビー(マイケル・キートン)で、やり手ではあるが、協調性もある。新任のバロン局長とやり合うこともない。
バロン局長はある日の編集会議で、とある神父の話題を切り出す。その神父……ゲーガン神父は30年間に亘って、80人もの子供に性的虐待をしていた。教会(枢機卿)は15年前から虐待の事実を知っていたにもかかわらず、隠蔽した。
だが、それを裏づける確たる証拠はなかったし、未だに影響力を持つ教会を非難する者は現れなかった。
ボストン・グローブは、コラムで事件を扱ったことはあったが、掘り下げてはいなかった。バロン局長はロビーを呼び出し、事件の調査を指示した。
スポットライト担当の記者たちは、ゲーガン神父の被害者、被害者側弁護士、教会側だった弁護士などに取材する。新聞社VS教会という構図になるが、マフィアなどは登場しない。教会を心理的に恐れる者は多いものの、教会は刺客を放ったりしない。もはや中世ではないのだ。
記者たちはけっこう自由に立ち回る。取材すればするほど、真実が暴かれていく。結局、90人弱の神父が性的虐待に関与していたことをつかむ。
手口は卑劣である。困窮した児童をわざわざ訪ねたり、シスターに貧しい子供を集めさせたりして接触。優しくし、頃合いを見て、イタズラする。教区には小児性愛神父が茹だるほどいた。そいつらはもう聖職者とは言えない。
カトリックなので、強いかと思ったら、そんなことはなかった。新聞記者たちのほうが断然強かった。時代的にそれは仕方のないことか。一瞬『JFK』みたいに告発する側が脅迫されたり白い目で見られたりするのかと期待したが、車に傷をつけられることさえなかった。
とはいえ、衝撃的な事実がどんどん出てくるし、ひじょうに追いやすい構成になっているので、最後まで退屈しないで視聴することができた。
まさに世紀のスクープだ。
2015年アメリカ