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古代ローマには公衆浴場(テルマエ)があって、ローマ市民の憩いの場、娯楽となっていた。テルマエ技師のルシウス(阿部寛)には、斬新なテルマエを建築するという夢があったものの、うまくいっていなかった。周りの理解も得られなかった。
ある日、ルシウスは友人とテルマエに行った。テルマエは時代によって特徴が異なるはずだが、はっきりと覚えていないので、どこまで史実に近いかはわからない。物語の設定では、ハドリアヌス帝の時代である。おそらくその時代のテルマエを再現しているのだろう。ルシウスはそこで、タイム・スリップする。
浴槽の壁の穴に吸い込まれ、たどり着いた場所は現代日本の銭湯だった!
ルシウスは銭湯の洗面器に感心し、扇風機に感激し、フルーツ牛乳に感動する。その後、古代ローマに戻るも、またタイム・スリップして日本の民家に現れ、シャンプーハットを冠と勘違いして驚愕する。これには大いに笑った。
本作品は古代ローマ人のバカげたカルチャー・ショックが滑稽だ。ローマ帝国のことを知らなくても、楽しめる。いや、知っていても、特別役には立たない。歴史ではなく、雰囲気の問題である。阿部寛のローマ市民ぽいと思われる考え方とリアクションが笑えるのだ。コントに近い。
ただ、ルシウス本人は大真面目である。日本で見たもの(シャワーなど)をなんとか模倣する。その甲斐あって、彼は名声を得る。ハドリアヌス帝のテルマエの設計を依頼(命令)されるまでになる。
個人的には前半の阿保さ加減が面白くて、後半のタイム・パラドックスと恋愛要素には肩入れできなかった。原作は一息に読めた気がするのだが、ずいぶん前のことなので、なんとも言えない。もう一度、原作を読みたくなった。
ローマ皇帝と市民の愛したテルマエは、帝国の衰退とともに姿を消していく。