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ネット社会の弊害。負の部分に焦点を当てた作品。
とはいえ、いくらネットが発達しようと、結局、人が人を必要とすることに変わりはない。
人々はネットを求めているのではなく、人を求めているのだ。
誰かを攻撃するため、もしくは、誰かと親しくなるために。
だからネットの世界でも当然、人間関係は生まれる。問題は、“ネット以前”とは人との結びつき方が異なり、多くの危険をはらんでることだ。リアルな世界と同様、ある種のルールはあるが、善悪の境界線を軽く越えてしまう人々があまりにも多い。
欺瞞、詐欺、性。
ネットにはそれらが横行している。本作品で取り上げられたテーマでもある。日々起きているネット上の闇を、3つのストーリーを軸として描いている。
一つめは、いじめられっ子といじめっ子の話。
いじめは永遠のテーマだろう。ちょうど、生きにくさや親への反発が噴出する世代に達した少年たちが、使い切れない力を他者への攻撃に向ける。しかも、ほんの軽い気持ちで。標的になったほうはたまらない。
少年たちの視野はまだ狭い。学校と家庭が世界のほぼ全てである。逃げればいいと言われても、なかなかそうはいかない。学校でもうまくいかず、家庭でも満たされなかったら、やはりどうしようもなく傷つくだろう。本作品では、少年たちの抜き差しならない状況をうまく表現していると思った。
他のストーリーも刺激的だ。
アダルト・チャットで稼ぐ青年に、取材を試みる女性ジャーナリストのパート。青年はポン引きの下、劣悪な環境で働いている。未来への展望はなく、刹那的に生きている。一方、女性ジャーナリストも仕事のために枕的な行為に及ぶ。法的には、金銭を受け取らなければ、春を売ることにはならないのかもしれないが、本質は同じだと思う。
それから、詐欺被害に遭って破産した夫婦の物語もある。夫役のアレクサンダー・スカルスガルドが、精神的に追い詰められていくサマを見事に演じていた。個人的には、この話がいちばん響いた。彼ら夫婦はうまくいってもらいたい。
決して、明るい映画ではないものの、救いがないわけでもない。救われる者もいれば、救われない者もいる。
考えさせられる映画だ。
とにかく、ネット上での情報発信には気をつけないといけない。セキュリティにも、注意を払わないといけない。
自己責任とよく言われるが、これまで以上に、自分自身や大切な人々を守る術を身につけることが求められている。
怖い時代だ。
人間はいたるところで戦いに明け暮れている。