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確実に観たはずなのに思い出せなかったので、 もう一度視聴した。始まってすぐ、あーーーーとなったが、せっかくなので、最後まで観ました。
主人公はユダヤ系ポーランド人のピアニスト・ウワディク(エイドリアン・ブロディ)。舞台はポーランドのワルシャワ。
ちょうど、イギリス、フランスがナチス・ドイツに宣戦布告をした時期である。ポーランドは英仏の参戦に大喜びだったが、あえなくドイツに呑み込まれた。ぬか喜びだ。
ドイツがワルシャワで始めたことの一つに、ユダヤ人への徹底的な迫害がある。
まず、ユダヤ人は財産の所有を制限される。カフェへの入店もできなくなる。公園への立ち入りも許されず、ベンチに座ることもできない。舗道は歩けず、車道の端を歩かされる。ダビデの星(六芒星)の腕章を着用させられ、居住区(ゲットー)を決められ、隔離される。ワルシャワ・ゲットーのユダヤ人口はおよそ36万人。時は1940年10月31日。
ウワディク一家(老父母と姉二人、弟)も、ゲットーへの移住を余儀なくされる。ゲットーの衛生状態は最悪で、人々に生気はない。ドイツ兵の気まぐれで、虐げられ、射殺される。終わりの見えない地獄である。
ウワディクはゲットーのレストランでピアノを弾いて日々を過ごす。客はゲットーの住人、ウェイターもゲットーの住人。皆、六芒星の腕章をつけているので、異様な光景に見える。だが、このときはまだ、ゲットーに富裕層がいた。隔離された社会でも、階層は生まれる。うまく生きる人もいれば、道端に屍を晒す人もいる。
うまく立ち回る人々も、安泰ではない。迫害は日増しに強くなる。今日生き延びても、明日はどうなるかわからない。ゲットーに留まっている限り、地獄は終わらない。ウワディクはある決断をする。
ゲットーの住人たちは最終的に、トイレもない列車に乗せられ、収容所に送られ、ゲットーは解体された。ナチスの手先となり、同胞を迫害したゲットーのユダヤ人警察官たちも皆、用済みとなり、収容所送りとなった。この時期、彼らはまさに受難の民だった。
戦争となれば、そういうことも起こり得る。