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赤木春恵さんの遺作である。当時88歳。認知症の女性みつえを演じている。
タイトルにあるペコロスとは、小型の玉ねぎのこと。劇中では、みつえの息子雄一(岩松了)の頭に対するメタファーとして使われる。わかりやすく言うと、てっぺんに毛がない磯野波平カットなのだ。
雄一は悪い人ではない。うだつの上がらないサラリーマンだ。ペコロス岡野という芸名で音楽活動をしたり、趣味で漫画を描いたりしている。多芸である。認知症の母みつえ、一人息子まさきと長崎で暮らしている。
みつえの認知症は徐々に進行する。汚れ物をタンスいっぱいに詰めたりといった、周辺症状も見られるようになる。雄一はケアマネと相談。悩んだ末に、グループホームに母みつえを連れていく。
一般的に、認知症は治らない病気だ。進行を遅らせることができれば成功である。みつえの認知症はおそらく、進行が速い。雄一のことさえ、わからなくなる。
雄一は会社をリストラされるが、元気だ。似たような境遇にあるヅラの人(竹中直人)と仲良くなる。それと並行して、みつえの過去が紹介される。なかなかヘビーな過去だ。ヘビーな時代だったのだ。
また本作品では、大胆にも、認知症患者の内面に切り込んでいく。そして(大げさに言えば)、その思念を幻惑的に表現する。
“認知症は第二の人生”と知り合いが言っていたことをふと思い出した。