What's it about ?
暗い過去を引きずった中年男が、有力者の娘の救出に向かう。
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ハードボイルドな作品。PTSD強めな主人公ジョー(ホアキン)の仕事は裏稼業、つまり仕事人である。依頼を達成するためには、暴力もいとわない。が、ステイサム的な作品ではない。ヴァイオレンスは観ていてスカッとするものではなく、ヘヴィで、ブルータルだ。とことん殺伐としていて、血なまぐさい。
ハードボイルドの主人公は大抵、物静かで、ある種のルールを持っていて、一匹狼で、人の痛みのわかる、闇にまみれたヒーローだが、ジョーもそういった条件はクリアしている。ただし、ホアキンは役作りででっぷり太っているので、見た目はクールとは言えない。眼光が妙に鋭いところを除けば、むさ苦しいおっさんだ。
テンポは、すこぶるスロー。余計な説明と台詞を排除することで、緊張の糸がピンと張っている。観ていると、静かに、じわじわと、狂気に侵食されていくような錯覚を覚える。
ジョーは老母の世話をしながら生活をしている。猫を飼う私立探偵(マーロウ)とは、印象が異なる。老婆と住む仕事人は暗い記憶に苛まれ、出口(死)を求め、さまよい続ける。
ある日、ジョーは代理人を通して、依頼を受けた。州の上院議員からだ。家出娘ニーナを連れ戻してほしい、と。報酬は五万ドル。高いのか安いのかよくわからないが、ジョーは簡単に仕事を済ませる。
だが、ニーナと関わったことにより、とんでもない事態を招くことになる。
ジョーの周囲は血の海と化す。
最終的に再生の端緒に行き着いたと解釈できないこともないが、どうだろう。他人を救うことが自らを救うことにつながる、と言いたいところだが、踏み込んだ描写は見られない。
You were never really here
原題である。