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『グッバイ、レーニン!』2003年ドイツ / 監督 ヴォルフガング・ベッカー


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What's it about ?

病床にあって、ベルリンの壁の崩壊を知らない旧東ドイツ国民の母親に、祖国が存続しているように嘘をつき続ける、心優しい青年の物語。

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アレックス(ダニエル・ブリュール)が少年のとき、父親が西ドイツに亡命した。母はショックの余り、話すことができなくなって入院。ムリもない。家族が東ドイツから西に亡命する事態は残された者にも、深い影を落としたに違いない。退院すると反動からか、熱心な社会主義活動家となり、勲章をもらう。


共産国家というと、密告の盛んな、不自由で抑圧的な体制を思い浮かべがちだけれど、90年代辺りだと、自由を求めるデモが起こるようになる。青年アレックスはそのデモに参加して、通りを練り歩く。そのとき、母は通りで成り行きを見守っていたが、アレックスの姿を発見するや否や卒倒して、病院に運ばれる。


母が意識を失っている間に、ベルリンの壁は取り壊され、共産党のトップが辞職した。西ドイツの資本が東になだれ込み、地味な食料品店はスーパーマーケットに変わった。旧東ドイツ国民の多くは貯金を西ドイツ・マルクと交換した。東ベルリンの家族用アパートの家賃は西ドイツ国民一人当たりの電話代より安かった。競争より、共存。一つの理想が運用面での難しさにより、潰えた。


母が意識を取り戻したとき、ドイツ国民は時代のうねりの中にあった。担当医はアレックスに対して、ショックは命取りだと告げる。ベルリンの壁崩壊や東西ドイツ統一は、コテコテの社会主義者には受け入れがたい、ショッキングな歴史的事実だ。息子は一計を案じる。


つまり…


東ドイツはなくなっていない。今も存続している。日常にはなんの変化もない。アレックスは部屋の模様替えをしたり、旧東ドイツの質素な料理を再現したりして、母を騙そうと躍起になる。東ドイツ時代では高価で買えなかったビデオデッキをもらってきて、旧東ドイツのニュースを流す。母が真面目にニュースを見ている姿は憐れであり、おかしくもある。嘘はだんだん大がかりになり、アレックスは友人とフェイク・ニュースを制作して、母に見せる。始めは嘘の上塗りだったが、次第に、アレックス的理想のドイツ像を表明したものに変わっていく。そして最終的に、フェイクは単なるフェイクではなく、東ドイツ国民の叶えることのできなかった夢へと変質する。



本作品は実に取っつきやすい。庶民の生活の変化を軽妙に描いている。言わば、大人のメルヒェンだ。


アレックスの恋人ララ(チュルパン・ハマートヴァ)も、かわいかった。





余談になるが、統一直後、東西ドイツ国民の間にはまだ見えない壁があったのだが、サッカーW杯における代表チームの活躍によって、それはだいぶ低くなった。スポーツの力、明るい面を見ると、なんとなく気分がよくなる。