上空でクロール

介護福祉士による雑記ブログ。主に、映画・本・時事。目標は1000記事。書きたいときに書き、休みたいときは休む。線路は続くよ、どこまでも。

『ラッキー』2016年アメリカ / 監督 ジョン・キャロル・リンチ / ハリー・ディーン・スタントン×デヴィッド・リンチ


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独居老人の日常とナッシング

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ハリー・ディーン・スタントンと言えば、『パリ、テキサス』のトラヴィス役で有名。『パリ、テキサス』と言えば、ナスターシャ・キンスキーも。いやあ、きれいだったなー。トラヴィスは愛していながら彼女のもとを去るのだ。あ、息子もいたな…


ハリー・ディーン・スタントンは故人である。最後の出演作が本作品で、主人公ラッキー(90)を演じている。


ラッキーは愛にはあまり縁がなさそうな爺さんだ。ロマンス自慢はない。第二次大戦に従軍したことを誇りにしている。


起きたら煙草に火をつけ、紫煙の漂う室内で腋を拭き、ハミガキを済ませ、薄くなった髪の毛を撫でつける。コミカルな動きでストレッチ…と思ったらヨガだった。ミルクをごくりと一口。全部飲まない。コップのまま冷蔵庫に保存。食べ物は入っていない。


ラッキーは引きこもっているわけではない。テンガロン・ハットをかぶって、町に繰り出す。繰り出す、と書いたが、そんなに威勢のいいもんではないし、舞台は田舎町で、寂れている。物陰からガンマンが現れそうな雰囲気だが、もちろんそういったスリリングなお話ではない。メインはラッキーという偏屈爺さんの日常だ。町のダイナーでクロスワードを解き、バーでカクテルを飲み、帰宅したらクイズ番組を見る。


延々と続きそうな毎日に、あるとき、転機が訪れる。ラッキーが倒れたのだ。が、病院での検査の結果は異常なし。血圧は115/70で、喫煙しているくせに肺の調子も良好。年齢も年齢だし、かえって吸ったほうがいいと医者は言う。


ラッキーは初めて倒れたことで、神経質になる。友人のハワード(デヴィッド・リンチ)が、逃げたペットのリクガメに財産を譲ろうとしているのを見て、本気で怒る。90歳にして、人生の終わりを意識するようになる。


本作品は無理のない、ゆったりとした展開で流れていく。起伏はないし、大きな事件も起きない。日常の中に対話があり、会話では何度も“ナッシング”という単語が出てくる。それはもちろんニヒリズムのことなんだけど、ラッキーは学問ではなく、日々の生活を通して考え、やがてきたるナッシングに対処しようとする。


ラッキー(字幕版)

ラッキー(字幕版)

  • 発売日: 2018/12/05
  • メディア: Prime Video


これは…退屈を描いた物語だけど、観ていて退屈ではなかった。ラスト10分、バーのシーンに全てが集約されている。


不思議な作品だ。是非。



映画『ラッキー』予告編