『MERU / メルー』
“Because it’s there”
なぜ山に登るのか、という問いに対して、イギリスの登山家ジョージ・マロリーはそう答えた。山とは、当時(1923)未登頂だったエベレストのことだ。翌年、マロリーはエベレスト頂上付近で遭難し、帰らぬ人となる。
本作品は3名の登山家が、インド北部のメルー(標高6250m)の岩壁“シャークスフィン”に挑む、ドキュメンタリー映画である。
メルーは既に登頂されているが、シャークスフィン(サメのヒレ)は未登攀らしい。
惜しくも打ち切りとなったTV番組『クレイジー・ジャーニー』では、何人かの登山家が取り上げられていた。命がけでトライするクレイジーぶりは、常人(ぼくのこと)の度肝を抜いた。
そのとき得た知識というか、情報のおかげで、本作品にはすんなり入り込めた。人生、何がどこで役に立つかわからない。本作品は2019年11月現在、Amazonプライムで無料で視聴できる。約90分のドキュメンタリーだ。
ドキュメンタリーに求めるのは、迫ってくるものがあるかどうかの一点に尽きる。仮にある程度の作為があったとしても、構わない。伝えることがある以上、意識的であれ、無意識的であれ、演出が潜むのは致し方ない。問題は程度であり、信憑性が維持される範囲内であれば、受け入れることはできる。
『MERU』にはもちろん、迫ってくるものがあった。偉大な挑戦者は普遍的でありながら、特別な何かを我々に突きつける。
監督は、本作品の出演者でもある登山家ジミー・チンと、妻のエリザベス・チャイ・バサヒリィ
メルーに挑むメンバーは、コンラッド・アンカー、ジミー・チン、レナン・オズターク
ジミー・チン監督が「登山を超えた登山映画」最新作「MERU」を語る https://t.co/mfwkoWBL75 @dot_asahi_pubから
— 高空でクロール (@eigasekai_news) 2019年10月28日
登山には常にイレギュラーがつきまとう。過酷な自然相手のことなので、当然だ。困難の末に登山家の目に映る景色は、彼らにしか見ることができない。作品内でコンラッドは、景色を見るために山に登ると言っていた。登山家を駆り立てる素晴らしい景色が、頂の下には広がっているのだ。

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コンラッド・アンカーは、1999年、ジョージ・マロリー遺体捜索隊の一員としてエベレストに赴き、マロリーの遺体を発見している。