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『大統領の執事の涙』2013年アメリカ / 監督 リー・ダニエルズ / 主演 フォレスト・ウィテカー


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大統領の執事の涙』は、アフリカ系アメリカ人の執事セシル(フォレスト・ウィテカー)と、その家族を、公民権運動の流れの中で追った映画である。

セシルの職場はホワイトハウスなので、アイゼンハワーケネディニクソンレーガンといった大統領も登場するが、あくまで脇役だ。メインは人種問題であり、アメリカにおける黒人の歴史である。

アメリカの人種差別の対象は、黒人だけではなく、ネイティブ・アメリカンや我々黄色人種にまで及ぶ。南部における有色人種への差別は根強いと聞く。人種差別は自由の国アメリカの暗部であり、とてもデリケートな社会問題なのだ。


かつてのアメリカでは、白人が黒人をあやめても、罰せられなかった。白人の子と黒人の子が、机を並べて授業を受けることはなかった。飲食店には白人席があって、有色人種はそこに座れなかった。黒人は公共施設の利用を、きつく制限されていた。

差別撤廃運動は、人間が人間らしく生きるために必要なものだった。その過程において、多大な犠牲と重大な誤りもあっただろうが、功績は計り知れない。オバマ大統領の誕生は実に象徴的な出来事だった。


セシルは差別されるのが当たり前の世界で、奴隷の子として生まれ、辛酸をなめたあと、運と実力でホワイトハウスの執事になった。そのお陰で、当時の黒人としては、かなり恵まれた生活を送り、車を持ち、家を持ち、息子二人を大学に進学させることができた。
だが白人に比べると、給与は4割も低く、昇進の望みはなかった。レーガンホワイトハウスの住人になるまで、それが改善されることはなかった。

長男は公民権運動に身を投じ、次男はベトナムで戦死した。セシルは執事の仕事に誇りを持っていて、“運動”とは距離を置いていた。長男ルイスは過激な行動によって、何度も警察に捕まり、時には刑務所に入れられた。
当時のセシルにとってそれは、単なる逸脱に思えたのかもしれない。ルイスのすることがどうしても許せず、対立する。ルイスにはルイスなりのバランス感覚というか、思想があって、人命を奪うことには反対の立場だった。マルコムXの思想を受け継ぐブラック・パンサー党にも身を置くが、彼にはそぐわなかった。

映画は父子の対立を軸として進んでいく。白人への給仕を仕事とする父親と、黒人の地位向上を求める息子。レーガン政権期に、風向きが変わった。